新緑の季節とイチゴの蕾

ぼくにとって一年でいちばん山がきれいだと思うのは、紅葉ではなく、5月の新緑の時期だ。

それも雑木山がよい。

杉山は年中色がおんなじで鬱蒼としていておもしろくない。

雑木山は萌黄色から老緑まで絵筆で点々と色付けしたように、明るく鮮やかに映えている。気温も暖かくなってくるこの時期に、山を眺めているとなんともいえない活力がもらえる。

そんな山裾から毎朝、野菜の苗に水をやるのは、ぼくのこの時期の日課だ。

山を眺めてばかりいられない。ぼくの仕事はどちらかというと、足元を見ることだ。土から育つ植物によって暮らしているのであって、遠景は自然と共に暮らす中でのおまけにすぎない。

そういえば今年、ホームセンターでイチゴの苗が100円で売られていた。見切りの特売品だったのだが、それをひと株買って帰って、鉢植えに移し替えた。

根が活着し始めたころを見計らって、化成肥料をほんのひとつまみ。

それで、野菜の苗と一緒に毎朝水やりをしている。

一週間前まで白い花を咲かせていたイチゴは、今や青い蕾をふくらませて、少しずつ色づきはじめている。

この時期になると、昨日と今日で明らかに成長しているのがわかるからおもしろい。

今年はほんの数粒ありつけるだけだろう。100円だと市場の相場と変わらないくらいしか収穫できない。

しかしイチゴはやろうと思えば無限増殖するのである。

イチゴはこの時期から、つるを伸ばす。このつるのことをランナーというのだけど、ひょろひょろと伸びたランナーは地面を張って、そこにまた根を張って株を増やす。

ちょうど根を張るであろうところへ新しい鉢を用意しておいて、そこに根付かせれば、ひとつから始まったイチゴの鉢植えが増えていくというわけだ。

来年にはイチゴ1パックぶんほどの収穫になって、もう一年がんばったら、イチゴ3~4パックぶんくらいは収穫できるだろう。

こうなると、100円の買い物はずいぶん安かったじゃないかと胸を張れる。

山の新緑を愛でるよりずいぶん現実的な話だ。

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